葬儀に呼ばれた時、そして葬儀をおこなう時、一体どんな服装が良いのか迷った経験はありませんか?葬儀で着る喪服には、男性にも女性にも一定のルールがあります。最近は「略礼装」と呼ばれる簡易的な礼装で臨むケースが一般的ですが、場違いな服で恥ずかしい思いをしないように詳しく解説していきたいと思います。
1.葬儀にふさわしい服装まとめ
最近では喪主や遺族であっても、葬儀に参加する人たちと同様に「略礼装」と呼ばれる服装を着るケースが多いのが現実です。服装に関してそこまで気にしない家柄・家系であれば、略礼装でも構わないでしょう。
◆女性の服装まとめ
関係 | 形式 | 詳細 |
喪主・遺族 | 洋装 | 黒無地のワンピース、アンサンブル、スーツ |
和装 | 黒無地の染め抜き五つ紋の羽二重か一越ちりめんの着物・羽織 | |
友人・参列者 | 洋装 | 黒のワンピース、スーツ。または地味な黒の平服 |
◆男性の服装まとめ
関係 | 形式 | 詳細 |
喪主・遺族 | 洋装 | モーニングコート、ブラックスーツ |
和装 | 黒羽二重染め抜き五つ紋の着物、羽織に、仙台平の袴、角帯 | |
友人・参列者 | 洋装 | ブラックスーツ、ダークスーツ |
2.葬儀の服装「礼装」にはランクがある
葬儀の服装といえば、男性はブラックスーツ、女性は黒ワンピース、少し古風な家では和服を着る、といったイメージを持つ人が大半ではないでしょうか。実は葬儀のときに着る服装にはランクがあります。普段はあまり気にしたことがないと思いますが、この礼装(礼服)のランクこそが葬儀の服装の最大のポイントです。ちなみに、洋装と和装に格の上下はありません。
喪主や遺族など、故人と関わりの深い人ほどランクの高い服装(正式礼装)を着ることになっています。逆に故人の友人や同僚として葬儀に参列する人は略礼装でも良いとされています。
3.【喪主・遺族】女性の葬儀の服装
本来であれば、喪主や遺族などの葬儀を行う側は、通夜・告別式を通じて、正式礼装で会葬者を迎えることが望ましいです。しかし最近では、そこまで服装にこだわらないケースが増えてきていますので、女性も「略礼装」と呼ばれる軽い礼服でも構わないでしょう。
(1)女性の正式礼装(喪主や遺族)はアフタヌーンドレス
上半身は、襟の詰まった黒のブラウスの上に、黒無地のアフタヌーンドレス、ワンピースかアンサンブル、スーツを羽織ります。生地に関しては透けていたり、光沢のあるものなど、つまり華やかさのあるものは避けましょう。
下半身の黒地のスカートは、正座した際にもヒザがしっかり隠れる程度の長さがあるものを履きましょう。足元は、黒無地のストッキングに、布製で金具などがついていない靴(パンプス)を履きましょう。革製の靴でも、光沢の無いものであれば問題ありません。
派手なメイクは避けますが、逆にノーメイクも失礼なので、薄くファンデーションを塗り、ナチュラルカラーや薄目の口紅をつけましょう。
ちなみにバッグに関しても、黒の布製でなるべく金具のついていない地味なものを選ぶようにしましょう。アクセサリーは結婚指輪以外には身に着けないほうが無難ですが、真珠のネックレスぐらいであれば許容範囲です。
また髪型については、清潔感があって、派手にならないようなスッキリとしたまとめ方を心がけましょう。
詳しくはこちらも参照してください。
↓↓↓
◆法事の意味、服装・髪型、準備方法、お供えもの
http://www.sougi-souzoku.com/memorialservice/houyouwookonau/
◆女性の正式礼装(洋装)まとめ
服装 | 詳細 |
上着 | 黒無地のアフタヌーンドレス、ワンピース、アンサンブル、ドレス。夏でも長袖を着て、生地は光沢感のあるものは避ける。 |
シャツ | 襟元の詰まったシンプルなブラウスやワンピース |
スカート | 黒無地のスカートで、丈はひざが隠れるくらい |
ストッキング | 黒もしくはナチュラルカラーのストッキング |
靴 | 布製で金具の付いてない地味なパンプス |
バッグ | 布製か革製で光沢のない地味な黒バッグ |
アクセサリ | 結婚指輪以外は身につけない |
(2)女性の正式礼装は和装でもOK
着物の場合は、黒無地の染め抜き五つ紋付きをきます。夏は駒絽や平絽など、冬は羽二重冬は羽二重か一越ちりめんの生地を用いたものが理想的です。半襟や長襦袢は白にします。帯は黒文字か地紋のある黒とし、黒の平打ちひもか組みひもで帯締めし、端を下向きにし、帯留はつけません。足元は白の足袋に、黒の布製の足袋を履くと良いでしょう。
女性の正式礼装(和装)まとめ
服装 | 詳細 |
着物・羽織 | 黒無地の染め抜き五つ紋付き。冬は羽二重か一越ちりめん、夏は駒絽や平絽など。紋は実家の女紋か婚家の紋にする。 |
半襟・長襦袢 | 白 |
帯 | 袋帯の黒無地か地紋のある黒帯。お太鼓を小さめに結ぶ。 |
帯締め | 黒の平打ちか組みひも。端を下向きにし、帯留めはつけない。 |
帯揚げ | 黒にする |
足袋 | 白 |
草履 | 黒の布製の草履 |
バッグ | 黒の布製のバッグ |
4.【友人・参列者】女性の葬儀の服装
女性の略礼装は黒のワンピースかスーツです。最近では喪主や遺族でも略礼装で通夜・告別式に臨む人が増えてきていますので、葬儀に参列する側の方であれば略礼装でまず問題ありません。
黒、濃紺、濃いグレーのワンピ、アンサンブル、スーツなどを着用します。できればデザインは襟の詰まったシンプルなものが望ましいです。ストッキングは黒かナチュラルカラーのものにし、靴は黒で金具の少ないパンプスを履きましょう。アクセサリーもできる限り控え、バッグも黒色の地味なものにしましょう。
◆女性の略礼装まとめ
服装 | 詳細 |
上着 | 黒、濃紺、濃いグレーの地味なワンピースやスーツ |
シャツ | 襟元の詰まったシンプルなブラウスやシャツ |
スカート | 黒無地のシンプルなスカート |
ストッキング | 黒かナチュラルな色のストッキング |
靴 | 布製で金具がない飾りけのないパンプス |
バッグ | 黒の布製のバッグ。金具や光沢のないものが良い |
アクセサリ | 結婚指輪以外は外す。真珠のネックレスは許容範囲 |
5.【喪主・遺族側】男性の葬儀の服装
正式な礼装を着るのは、葬儀当日の喪主や遺族ぐらいです。ただし、最近では喪主や遺族であっても、「略礼装」と呼ばれるブラックスーツを着るのが一般的になってきています。
では現代では、一体どんな葬儀のときに正式礼装を着るのでしょうか?それは規模の大きな葬儀や社葬の時に、葬儀委員長や弔辞朗読者などに選ばれたときは必ず喪主などに確認したうえで正式礼装を着用します。確認する理由は、喪主や遺族側が正式礼装を着ないのに、会葬者が正式礼装を着た場合、ランクがちぐはぐになってしまうからです。喪主と同格の服装にしましょう。
(1)男性の正式礼装(喪主や遺族)はモーニング
葬儀の正式な服装は、モーニングもしくは和装です。
上半身は、白シャツの上に、黒無地のネクタイを締め、ベストの白襟をはずした状態で、モーニングコートを羽織ります。下半身は、ストライプの入った灰色のズボンを着て、黒無地の靴下に、光沢のない黒の革靴を合わせます。
ただしモーニングは昼間の礼装なので、通夜には着ることはできません。通夜のときは、モーニングではなく、ブラックスーツを着ましょう。
◆男性の正式礼装(モーニング)まとめ
服装 | 詳細 |
上 | モーニングコート。上着の前ボタンは普通の上着の合わせ。 |
下 | 黒、グレーの縦じまストライプのズボン。仕立てはシングル。 |
ベスト | 黒のシングルベスト。白襟は外す。 |
シャツ | 白無地のワイシャツで立て襟にする。カフスボタンを付ける時は黒曜石(ブラックオニキス)など、黒色のもの。 |
ネクタイ | 黒色で無地柄のネクタイを結び下げる。ネクタイピンは付けない。 |
靴下 | 黒無地の靴下 |
靴 | 光沢のない黒色で、シンプルなデザインな革靴。 |
その他 | ポケットチーフは付けない。 |
(2)和装でも洋装でもランクの違いはない
和装の場合は、冬は羽二重、夏は平絽の黒無地の着物、五つ紋付の羽織を着て、袴は仙台平もしくは博多平とします。半襟・長襦袢は白かグレーにし、帯は地味な色の角帯で結びます。もちろん足袋は白で、草履の鼻緒は黒または白のものを履きます。
ここで気を付けるポイントは、先ほど申し上げた通り、喪主や遺族の人よりもランクの高い(格上)の喪服を着るのは失礼にあたるので、葬儀・告別式に参加する人は正式礼装は避けて略礼装のブラックスーツを着たほうが無難でしょう。
◆男性礼装(和装)まとめ
服装 | 詳細 |
着物・羽織 | 冬は羽二重、夏は平絽の黒無地の着物、五つ紋付きの羽織。 |
袴 | 仙台平または博多平。 |
半襟・長襦袢 | 白かグレーなど地味なもの。 |
帯 | 地味な色の角帯。 |
足袋 | 白 |
草履 | 鼻緒は黒か白。 |
その他 | 扇子は持たない。 |
6.【友人・参列者】男性の葬儀の服装
ブラックスーツは、服装のランクから言えば本来は「略礼装」という比較的軽い礼服ですが、最近では喪主や近しい遺族が着るケースも増えており、一般的には喪主でも参列者でもブラックスールまたはグレースーツで問題ありません。
上半身は、白無地のシャツに、黒無地のネクタイを結び、上着に黒無地のスーツを羽織ります。下半身にも黒無地のズボンを合わせ、足元は黒無地の靴下に、光沢のない黒の革靴を履きます。ブラックスーツは、TVドラマでもよく見かけ、一般的な葬儀の時の服装のイメージに近いと思います。
ちなみにダークスーツは濃紺、濃いグレーの色のスーツです。三回忌以降の法事(法要)であれば、まったく問題ありませんが、通夜・告別式などでは黒色のブラックスーツを選択した方が無難と言えるでしょう。
◆男性の略礼装(ブラックスーツ)まとめ
服装 | 詳細 |
上着 | シングルでもダブルでも構わない。 |
シャツ | 白無地のワイシャツ。カフスボタンを付ける時は黒曜石(ブラックオニキス)など黒色のもの。 |
ネクタイ | 黒無地のネクタイを結び下げる。ネクタイピンは付けない。 |
靴下 | 黒無地の靴下 |
靴 | 光沢のない黒で、シンプルな形の革靴。 |
7.子供の場合の葬儀の服装
幼稚園や学校の制服があれば、それが礼装となります。
制服のない学校の場合は、黒や紺、濃いグレーなど地味な色の服装にしましょう。
男の子でも、女の子でも、基本的には白いシャツやブラウスに、黒や紺、濃いグレーなどのズボン、スカートが適切でしょう。靴下や靴もできる限り黒やグレーなどで揃えたほうが無難です。
子供がまだ3歳未満の赤ちゃんの場合には、葬儀に連れていくこと自体を見合わせることもマナーです。当然赤ちゃんに近い年齢の子供であれば、葬儀会場で泣いてしまう可能性も高く、本来気を遣わなければならない遺族に対する気遣いができなくなってしまいます。
8.葬儀に着る喪服の意味と歴史
ではここで葬儀の服装の歴史的な成り立ちや意味を考えてみましょう。
葬儀の服装(喪服)は「喪に服する人が着る服装」という意味なので、本来喪服は遺族だけが着るものです。しかし、現在では葬儀に参列するすべての人が喪服を着るようになっています。ではこの喪服はいつ、どこで、どのように決まったのでしょうか。
◆江戸時代までの喪服の色は黒ではなかった
現代の我々は喪服と言えば黒色のドレスやワンピース、和服を想像しますが、実は江戸時代までの喪服は関西では白色の着物、江戸(東京)では染服つまり普段着が主流でした。明治時代になってようやく黒色の喪服が徐々に浸透していきました。そのきっかけとなったのは、幕末~明治を支えた大久保利通の葬儀参列者の多くが黒の礼服を着ていた事だと言われています。
葬儀の服装で他に気をつけること
葬儀の服装に関して、他にも気になるポイントや注意点を以下に解説します。
冬の寒い時期でもブーツは履かない
冬の時期は足元が寒くなってしまいますが、寒くてもブーツを履くのは絶対にいけません。葬儀にふさわしい黒の革靴や布製のパンプスなどを履くようにしましょう。
アクセサリーは結婚指輪、真珠のネックレスまで
本来葬儀で許されているアクセサリーは結婚指輪のみですが、どうしてもアクセサリーを付けたい場合は一連の真珠(パール)のネックレスにしましょう。二連以上のネックレスになると、派手な雰囲気が出てしまいますので、一連までのネックレスにしましょう。またイヤリングをしたい人は、一粒タイプのシンプルなものにしましょう。
黒でシンプルでも、ヒールの高いヒールはNG
いくら黒でシンプルなデザインといっても、ヒールの高い靴はいけません。パーティーに出る訳ではないので、5cm以下のヒールの付いた極力地味なパンプスにすると良いでしょう。
妊娠中はワンピースが最適
妊娠中に葬式に出なければならなくなった場合、妊婦用の喪服も売っていますが、わざわざ1日のために買うのはもったいないです。妊婦用の喪服レンタルを利用したり、黒のワンピースを利用すると良いでしょう。