樹木葬 – 散骨との違い、費用、種類について

自然に還る、という気持ちを叶えてくれます

木
昔から自然を大切にしてきた日本人にとって、樹木葬は「自然に還る」という意味で親しみやすいかと思います。樹木葬は費用も安く、メンテナンスの手間もかからないという意味でとてもメリットが大きいです。なぜなら樹木葬には墓石が不要の永代供養墓で、管理や供養の負担も少ない為です。では気になる樹木葬についてメリット・デメリットも含めて詳しく解説します。

1.樹木葬とは?

樹木葬とは、火葬後の遺骨を土に埋め、墓石のかわりに樹木を植える埋葬法のことを指します。樹木葬の特徴は、墓石などが必要ないぶん一般的な墓地に比べて使用料や管理費が安く、「自然に還る」というニーズにも応えられる部分です。さらに、樹木葬は永代供養墓の一つでもあるので、後継者やメンテナンスに悩む人にとってもメリットがあります。

最近では公営の墓地でも樹木葬をはじめる所もでてきています。東京・小平霊園では2012年からは合同で遺骨を埋葬する「樹林墓地」、2014年からは個別に遺骨を埋葬する「樹木墓地」の募集を開始しましたが、申し込み多く、抽選倍率は10.6倍にもなりました。

2.樹木葬の埋葬方法と植樹

樹木葬は、一般的な墓石型墓地と異なり、納骨室(カロート)は存在せず、通常は掘り下げた土中に遺骨を埋めて土をかぶせてきます。もしくは稀に円筒型の小さなカロートに遺骨を納める場合もありますが、いずれの場合にも墓石は必要ありません。

後述しますが、公園型(霊園型)樹木葬では、シンボルツリーとして桜やツツジなど、花が咲く樹木やクスノキを墓標の代わりに植えます。そのシンボルツリーの周りに遺骨を埋葬します。墓標を付ける場合には、小さなプレートを置く場合もありますが、これまでのお墓のように明らかな仕切りや区画はありません。

3.樹木葬での供養

供養については、献花台や礼拝堂などが共用できるようになっており、故人を偲んでの焼香や献花も自由です。法要も通常の寺院と同じようにおこなうことができます。合葬形式が一般的で、個別に埋葬する場合も、一定期間を過ぎると合祀されるところが多いため、墓の警鐘を前提としないという点も人気となっている理由の一つです。そんな背景をもとに、故郷のお墓を改葬し、現在の住まいの近くで樹木葬を選ぶケースも増えています。

4.樹木葬の種類・タイプ

樹木葬は、大きく分けると「里山型」と「都市型・公園型」の2種類に分類されます。

(1)里山型樹木葬

里山型樹木葬は、墓地として認可を得た自然の里山の土中に遺骨を埋め、多くの場合で苗木を植樹します。もちろんその土地の植生に適合する樹木を植えます。文字通り自然に還るというメリットがある一方で、地方や郊外まで出向かないと適した場所がないためアクセスが悪いというデメリットもあります。
さくら、つつじ

(2)公園型(霊園型)樹木葬

公園型樹木葬は、一人ひとりの遺骨に対して1本の植樹をする場合もありますが、一般的には霊園(墓地)内にシンボルツリーとなる樹木を1本植えて、その周りに遺骨を埋葬します。シンボルツリーには桜やツツジなど、花が咲く樹木が植えられるケースが多いです。国内初の樹木葬は里山型でしたが、最近では樹木葬人気の高まりを受けて、徐々に公園型の樹木葬も増えてきています。

5.樹木葬と散骨の違い

樹木葬が散骨と違う点は、遺灰をまいて自然に還すのではなく、墓地埋葬法に基づいて霊園(墓地)として認可された里山や墓地に遺骨を埋葬し、その区域に墓標代わりになる樹木がある、という点です。

また散骨の場合は、遺骨を2ミリ以下に粉骨して海や山に撒きますが、樹木葬の場合は墓域に埋葬するので粉骨する必要はありません。

6.樹木葬の費用・相場

整備された墓地も墓石も不要のため、従来のお墓に比べて費用は約5分の一になります。
里山型、公園型(霊園型)など場所や形式にもよりますが、樹木葬の費用は約20~70万円で、平均的には50万円ぐらいが樹木葬の相場です。
近年では、寺院墓地や民営墓地でも樹木葬は増えており、公営墓地に比べれば費用は高めですが、いずれにしてもこれまでの一般的なお墓に比べれば費用負担はかなり下がります。

7.樹木葬が登場した背景と歴史

墓地埋葬法に基づき、初めて里山で樹木葬墓地を開始したのは、岩手県一関市にある大慈山祥雲寺(知勝院)です。祥雲寺は、1999年に「花に生まれ変わる仏たち」というコンセプトに、自然と墓地との共生を掲げて樹木葬をはじめました。

ではなぜ一関市・祥雲寺から始まった樹木葬が日本全国に広まったかといえば、テレビでも大きく取り上げられたという経緯に加えて、時代が従来通りの高額な墓石型のお墓に対して新しい埋葬の形を模索していたという背景がありました。

というのも、日本の出生率が減少しており、親の死後に子どもにかかる供養や墓管理の負担も大きくなっていたこともありました。そんなタイミングに樹木葬の「自然に還り、草花に生まれ変わる」というメッセージはとても自然に受け入れていきました。

上述した祥雲寺がはじめた「樹木葬」が世に広まったのは最近ですが、もちろん古来日本から伝統的に行われてきた、遺体がゆっくりと土に還る「土葬」や、遺体を川に流す「水葬」、海や川に遺骨を撒く「散骨」などの「自然葬」はこれまでも行われてきました。最近ではライフスタイルの変化や価値観の多様化などの影響によって、海洋散骨や樹木葬などの自然葬が改めて脚光浴び始めています。

※散骨については下記も参照ください
散骨の方法|費用・許可・手続き・種類(海、山、空、ペット)

8.ペットと一緒に眠れる樹木葬

最近ではペットも家族の一員だから一緒に樹木葬をしたいと考える人も増えています。ただし、長年の風習・慣例によって人間と動物が一緒のお墓に眠ることを良しとしない霊園・墓地も多いので、まだ一般的にはなっていないため多くはありませんが、一部にはペットと一緒に入れる樹木葬もあります。

9.樹木葬のメリット・デメリット

樹木葬の良い面ばかりを見て決断するのではなく、きちんとデメリットも併せて検討する方が賢明です。ここではメリットに加えて、デメリットについても考えていきます。

(1)メリット

・「自然に還りたい」という故人の意志を尊重できる
・樹木葬の多くは個人墓なので継承者が不在でも購入が可能
・墓石建立に比較して、費用負担が圧倒的に軽く済む
・海洋散骨に比べて埋葬の考え方がお墓の形式に近く、特定の場所にお墓参りができる

(2)デメリット

・骨壺で納骨するタイプでないと、一度埋葬すると遺骨を取り出せなくなる
・交通の便が悪いところにある場合が多い
・新しい埋葬、供養スタイルであるため、故人の遺志と親族の考え方に食い違いが生じてトラブルになる可能性もある

10.まとめ

樹木葬について詳しく解説してきましたが、いかがだったでしょうか?里山型、公園型(霊園型)という種類にもよりますが、総じて樹木葬の費用は安く、永代供養のため供養や後継者などメンテナンスの負担も少ないことが特徴です。また散骨との違いは、遺灰を撒くのではなく、墓地として認可された場所に埋めるという点です。これらの点から、これまで通りの墓石タイプのお墓に近い形で供養もでき、さらに費用負担も少ないというメリットが活かせるので、興味のある人は終活など生前から検討してみてはいかがでしょうか。


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